「マインド・コントロール」(岡田尊司著/文藝春秋)を読みました。
著者は精神科医で作家の方。医療少年院の勤務経験もあり、依存等の問題に対しても豊富な臨床経験をお持ちの方です。
この手の本は多く出ていますが、この本はマインド・コントロールの歴史や具体的な手法、かかってしまう(かかりやすい)人のタイプや対処法まで、かなり具体的に書かれています。
催眠や洗脳も含めた「人の無意識を操る技術」というのが詳しく説明されていますが、他人を完全に支配することから企業のマーケティング活動や教育機関まで、ありとあらゆるところにマインド・コントロールは(程度の差はあれ)蔓延しているそうです。
普段の生活ではヘビーな洗脳などには縁がなくても、TVやネットの中では広告が溢れかえっているので確かに納得。(なので、最近はTVを見ることがかなり減ってます。。。)
本の中では、マインド・コントロールに”かかりやすい人”の特徴が4つ紹介されています。
- 依存的なパーソナリティ
- 高い被暗示性
- 現在、及び過去のストレス
- 支持環境の脆弱さ
特に1と2について紙面が多く割かれており、この2つが大きい要因なのは素人でも納得できます。
1番目の特徴について、
依存性パーソナリティとは、主体性の乏しさと過度な周囲への気遣いを特徴とするパーソナリティのタイプである。
(・・・中略・・・)
このタイプの人は強い意志を持った存在に支配されやすい。と言うよりも、自ら進んで、自分を強力に支配してくれる存在を求めようとする。(第三章 なぜあなたは騙されやすいのか)
と書かれています。
うわ〜〜〜〜怖い!まじ怖いーーー!
「自ら進んで」ですよっ。ありえない。
暴力的でダメな異性ばっかりと付き合う人とかも、こういうタイプなんでしょうか。
しかも自分でこのパーソナリティを自覚しているならともかく、自覚していなかったら悪い人に搾取され放題になってしまう!泣くわ!
たとえ悪い人に引っかからなくても、この手の人って結構多いですよね。特に女性。
自分を出さずに、常に周りに気を使っている人ってすぐに何人か思い浮かべることができます。
2番目の特徴もかなり怖いです。
被暗示性とは、暗示にかかりやすい傾向のことである。
(・・・中略・・・)
被暗示性が高い状態は、いわば、入ってくる情報に対して信じていいか、信じるべきではないかを批判的に判断する能力が低下した状態だと言える。(第三章 なぜあなたは騙されやすいのか)
イヤーーー!
ツイッターにいっぱいこういう人いるーー!
被暗示性が高い人というのは、催眠にもかかりやすいそうです。本によると一般人口の約1/4がこういうタイプらしいです。
これって、言い換えると「人を疑うことを知らない」ってことですね。
「人を疑うことを知らない」って割と良い特質として語られますが、何事も度が過ぎるとよろしくないということですね。
また、被暗示性は他の特性とも結びつきやすく、
- 演技性(空想と現実の区別がつきにくく、ヒステリーや空想虚言の傾向がある)
- 境界性(自己と他者の境界が曖昧になりやすく、意識が解離を起こしやすい)
などといったパーソナリティとも関連が強いそうです。
ただ、上記のような特性があったとしても全員がマインド・コントロールされやすいわけではなく、残りの特徴(”現在、及び過去のストレス”、”支持環境の脆弱さ”)などが重なると危険みたいです。
本の後半ではマインド・コントロールされやすくなる環境要因についても書かれています。
われわれの脳が正常な働きを維持するためには、適度な量の刺激を必要としているということだ。
(・・・中略・・・)入力情報が極度に不足した状態に置かれると、脳はどんな情報でも取り込み、吸収しようとする。それまで信じていた信念と異なる内容の情報であろうと、抵抗なく吸収しようとする。その結果、それは強く浸透し、それまでの信念に取って代わることも起こる。
(・・・中略・・・)
情報過負荷の状態が続くことによっても、脳は次第に主体的な思考力や判断力を失っていく。(第五章 マインド・コントロールと行動心理学)
上記は、過去に戦争捕虜や政治犯への思想改造実験や冷戦下の非人道的な様々な実験によって確かめられたそうです!
また、恐ろしい話ですが、洗脳やマインド・コントロールの手法も確立されているそうです。本には具体的な手法も書かれています。一般人としては手法を知っておくのも自衛のためにはいいと思います。
そして、究極の兵器としての国家によるマインド・コントロール研究は続いており、
ブッシュ政権が立ち上げたプロジェクトが、HAARP(High Frequency Active Research Program : 高周波活性オーロラ調査プログラム)である。その実態はヴェールに包まれているが、電磁波によって発生させた磁場の作用で、地球上の一定地域の人々の精神活動や行動に影響を及ぼす方法の開発を目指しているようだ。
(第五章 マインド・コントロールと行動心理学)
ともあるので、もはや一般人に自衛は無理かもしれません ^^;・・・・・・。
(補足:この本が書かれたのが2012年なのと、著者もこの部分は推測で書かれているので本当かどうかはわかりません。。)
こんな大掛かりなことをされたらもう諦めるしかなさそうですが、万が一身近な人が反社会勢力やカルト教団などのマインド・コントロールの被害にあった場合の対処法はきちんと書かれています!
まず、大前提として
マインド・コントロールの問題を考えるときに、常に忘れてはならないのは、それはコントロールする者からの一方的な操作や支配ではないということだ。コントロールされてしまうのは、それを求める気持ちをもつからである。強い確たる存在に同一化したいという願望が、マインド・コントロールを生むのである。
(第七章 マインド・コントロールを解く技術)
だそうです!
マインド・コントロールを解くというと「脱洗脳」という言葉がありますが、この方法のデメリットもきちんと書かれており、これに変わる最近の手法として「イグジット・カウンセリング(脱会カウンセリング、救出カウンセリング)」が紹介されています。
救出カウンセリングが重視するのは、受容と共感によって信頼関係を作ることである。特に家族との間の関係を修復することに重きを置く。なぜなら、その根底にある問題は、依存の問題であり、そこに依存せざるを得ないのは、身近に信頼できる関係がないからである。逆に、信頼できる関係を取り戻せると、自分を損なう関係に依存する必要がなくなるのである。
(第七章 マインド・コントロールを解く技術)
ふむ、つまりマインド・コントロールにかかるというのも依存の一種なんですね。
問題のある組織や相手に頼らなくても済むように、本人の精神的な自立と信頼できる人間関係(家族だったり、それに変わるものだったり)を再構築するのが大事ってことですね。
・・・と、割と怖いことが書かれていますが、子供に望ましい習慣をつけさせるとか、自己暗示など健全な方向にもマインド・コントロール的な手法は有効とも書かれていますので、何事も度が過ぎてはいけないということですね。
自分や周りの人のためにも読んでおいて損はない本です。
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