「なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか」を読んでみた
「なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか 人間の心の芯に巣くう虫」(シェルドン・ソロモン ジェフ・グリーンバーグ トム・ピジンスキー 著、大田直子 訳/インターシフト)を読みました。
第一印象は、
タイトル長いー。
でも、最近の世間様の様子に鑑みて気になったので読んでみました。
原題は THE WORM AT THE CORE On the Role of Death in Life なので、これを分かりやすく日本語化したようです。
「虫」というのはあくまでも比喩で、全体的には自尊心や「恐怖管理」について書かれた本です。
恐怖管理って見慣れない単語ですが、最近提唱された理論らしいです。
死の恐怖は多くの人間の行為の原動力になっている
第11章 死とともに生きる
といことだそうです。 つまり、人間は「自分もいつか死んでしまう」ということを知ってしまっているが故に
- 文化、宗教、信念、様々な儀式などを作り出し
- 自分(や、自分の属する組織)と異なる”他者”を攻撃したり排除したり
- 自尊心をことさら求めたり、それを高めようと努力したり
- 自尊心が満たされないと精神疾患や依存症になったり
するそうです。
本では数多くの心理実験で、上記の主張が間違っていないことを丁寧に説明しています。
人が”死を意識したとき”とそうでない時、その後の行動や判断が異なるそうです!
無意識に働きかけても同じだそうです。
また、”死を意識した”直後としばらくたってからとでは、とる行動が異なるということもその理由とともに説明されています。(近位防衛と遠位防衛。ちょっと難しいですが)
死に関する情報は、私たちに(意識的にせよ無意識的にせよ)「いつか自分も死んでしまう」という恐怖を思い起こさせるため、その恐怖から逃れるための盾として人には自尊心が必要だそうです。
自尊心は、自分は有意義な世界の価値ある参加者だという感覚である。この個人的重要性の感覚は、私たちの心の奥底にある恐怖を食い止めるものなのだ。
第3章 自尊心が壊れるとき
ですって!
自尊心って大事!というのはよく聞く話ですが、この説はかなり根本的なところをついており興味深いです。
この本によると、自尊心が低いと人が根源的に持っている「死の恐怖」に立ち向かうことが難しくなり、他者(自分の属する社会や組織と異なる価値観の人)を攻撃することで自分の自尊心を高めようとするそうです。
こういう人ツイッターとかにたくさんいるじゃなーーーい!!!
ああいう人たちは自尊心が低いのか。。。ふむふむ
自尊心を高める方法として
多様な自己概念を育む
というのが紹介されています。
人は誰でも
○○さんの娘/息子であり、△△の母/父または妻/夫であり、⬜︎⬜︎の姉妹/兄弟/いとこであり、ニートや学生や勤め人や社長や先生であり、スポーツクラブや色んなクラブの会員や常連だったりするわけなので、
- 学生としては平凡だけど、家では良き兄/弟
- スポーツは下手だけどカラオケはみんなに褒められる
- 非正規雇用だけど、よい親
とか、自分自身の多様性を認めるってことですね。
なんか沁みる。。。。。自分で書いといて www
この「恐怖管理理論」、なかなか難しいですがとても面白い考え方です。
これを知ることで、自尊心が低いとどうなるかがわかるし、人の行動原理もわかるようになるかもしれない。 賢い人が正しく利用すれば、行政の施策にもいかせそうですよ。
2017年のノーベル経済学賞は「行動経済学」の権威の方が取られました(東洋経済オンラインにリンク) が、近い将来「恐怖管理理論」もノーベル賞か何かとるんじゃないか?と勝手に考えています。
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